今回は、皆さんが家づくりで検討されることの多い「現場発泡ウレタン断熱材」について、本当に大丈夫なのかという疑問を深掘りしてお話したいと思います。
まず、私の基本的な考えとして、どんな断熱材を選んでもきちんとその特性を理解し、適切に施工すれば問題ないと思っています。ただ、断熱材の特性を理解しないまま誤った施工をしてしまうと、断熱性能が発揮されない…だけでなく、最悪の場合、湿気によるカビや構造体の腐食を引き起こす危険性があります。
現場発泡ウレタン断熱材には、大きく分けて2種類あります。
•100倍発泡(A種3型): ・吹き付けると大きく膨らみ、モコモコになります。
・膨らみが大きい分、断熱材自体の密度があまりない。
・そのため、湿気を通しやすい性質があります。
・実は、ほとんどの住宅で採用されているのはこのタイプです。
•30倍発泡(A種1H型): ・同じ量を吹き付けても膨らみが小さく、密度が非常に濃いのが特徴です。
・密度が濃い分、断熱性能は高くなります。
・性能が高い分、価格も高くなる傾向にあります。
「いっぱい膨らむ方が良いんじゃない?」と思われがちですが、実は逆で、密度が濃い30倍発泡の方が高性能なんです。さて、特に多くの住宅で採用されている100倍発泡(A種3型)を使用する上で、絶対に注意してほしい点がいくつかあります。
1.防湿層の設置
100倍発泡は密度が薄く湿気を吸いやすいため、断熱材を充填し、余分な部分をカットした後に、その上から防湿気密シートを壁一面に隙間なく連続して貼る必要があります。
これは国土交通省の技術講習テキストにも明記されている重要なポイントです。しかし、残念ながら、未だにこれができていない現場が多いのが実情で、非常に危険だと感じています。
湿気対策は、建物の寿命にも関わる非常に大切な工程です。
2.耐久性と耐震性への配慮 100倍発泡は30倍発泡に比べて柔らかいと言われています。そのため、地震や風などで建物が揺れた際に、断熱材と構造体が密着している部分が剥がれたり、ひび割れしたりする可能性があります。
もしそうなってしまうと、せっかく得られた気密性が損なわれるだけでなく、断熱欠損にも繋がってしまいます。
これを防ぐため、私たちは特にこの断熱材を採用する際には、耐震等級3という考え方に加えて、「制震(せいしん)」という考え方を取り入れるべきだと考えています。
制震とは、地震の揺れの衝撃を吸収し、建物へのダメージを出来るだけ少なくする仕組みのことです。
※現場発泡ウレタン断熱材のメリットとしては、直接吹き付けるため、隙間なく施工でき、高い気密性が確保しやすいという点が挙げられます。
では、私たちING-homeではどうかというと、主要な断熱材としては採用していません。
ただ、全く使っていないわけではありません。例えば、キッチンの配管やトイレの配管が床から基礎へ貫通する部分の隙間を埋めたり、外気が入ってくる微妙な隙間の気密処理に使ったりと、部分的な用途ではお世話になっています。
主要な断熱材として採用しない理由は、断熱材には本当に多くの種類があり、これにこだわらなくても魅力的な断熱材はたくさんありますし、現場発泡ウレタン系は比較的新しい商品であるため、あえて冒険する必要はないと考えているからです。
もし私たちが主要な断熱材として採用するとすれば、上記の防湿層の施工や、耐震等級3だから大丈夫ではなく、そこに制震をプラスするなど、最低限の注意と対策を徹底することが絶対条件となります。
家づくりは一生に一度の大きな買い物です。断熱材選びも、その特性を理解し、適切な施工がされているかをチェックすることが非常に重要です。